言葉2『蓮如上人 御一代記聞書讃仰』(二)

本願の宗教

本願はこれを向こうにおいて眺めているかぎり、「ああそんな世界もあるのか」と対象化して考えるしかない別世界のことである。

 聖道門の教えはわかりやすい。それは人間理性に訴える教えだからである。定善・散善、発菩提心、継続一貫・積極的聞法を説く教えは、時々単語の意味がわかりにくい所があったりはするが、大筋としてはわかりやすい。

 これに対して、浄土門の教え、特に本願は本当にわかりにくい。本願の教えは、本当は一番難解な宗教ではないだろうか。それは人間理性ではわからない世界だからである。

 本願は、本願に取り入れられて初めてわかる世界である。本願の宗教は、本願を信じ、本願に生かされている人物に遇うことによって初めてわかってくる。

細川巖著『蓮如上人 御一代記聞書讃仰(続篇二)』31・32ページより

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